研修から3か月後。
経理の担当者が、請求書のたたき台をAIで作っている。
営業の担当者は、提案書の骨子を5分で出している。
ほかの社員は、分からないことがあると、その2人に聞きに行く。
社長が何も言わなくても、使い方が少しずつ隣の席に広がっていく。
社員向けのAI研修で、本当にほしいのはこういう状態だと思います。
ところが、よくいただくご相談は、こうです。
「全社員に一度、AI研修を受けさせたい」
そう考える社長さんは多いです。
でも僕は、最初は絞ることをおすすめしています。
※冒頭の場面は例です。
この記事の結論
社員向けのAI研修は、誰に受けさせればいいのか?
最初は全員ではなく、AIに任せたい仕事を実際に抱えている2〜4名に絞るのがおすすめです。その人たちが自分の仕事で使えるようになると、社内に「聞ける人」ができて、そこから広がります。2026年8月の助成金の改正では、特定の業務に直結しない汎用的な研修や、研修の内容と関係のない人が受ける研修が、対象外の例として示されています。
- ▶全員に同じ話を1回するより、数名が使える状態を先に作る
- ▶選ぶのは「AIに任せたい仕事を持っている人」
- ▶研修の教材は、その人たちの実際の仕事にする
- ▶助成金では「業務に直結した内容を、その業務の担当者が受けているか」が見られる
この記事の内容読むのに約4分
社員向けAI研修、全員向けだと「自分の仕事」が出てこない
全員に向けて話すと、どうしても内容が一般論になります。
経理の人、営業の人、現場の人。
抱えている仕事がばらばらなので、全員に当てはまる例は「AIとは何か」「プロンプトの書き方」くらいしか残りません。
聞いた直後は「なるほど」と思っても、自分の仕事にどう当てはめるかは、各自に任されたままになる。
原因は、研修の中身ではなく、「誰の、どの仕事を変えるか」が決まっていないことです。
その結果、何が起きるのか。
研修のあとに、よく起きること
- ☑研修の翌週には、ほとんど誰もAIを開いていない
- ☑使っている人がいても、その人しかやり方を知らない
- ☑「うちの仕事には合わなかった」で話が終わる
どれも、社員のやる気の問題ではありません。
自分の実際の仕事で試す時間と、隣で聞ける人がいないまま終わっているからです。
じゃあ、どう始めればいいのか。
2〜4名に絞って、その人の仕事を教材にする
僕の会社の研修では、最初に受ける人を2〜4名に絞ります。

選ぶ基準は、この3つです。
- ☑AIに任せたい仕事を、いま実際に抱えている人
- ☑新しいやり方を、まず自分で試してみる人
- ☑あとで社内のほかの人に、聞かれたら教えられる人
役職や年齢は、基準に入れていません。
パソコンに詳しいかどうかも、あまり関係ありません。
研修の教材は、その人たちが実際に抱えている仕事にします。
例題ではなく、会社の資料や文面を使って、その場で試して直していきます。
全員に一度
内容が一般論になる。使える人が残りにくい。聞ける相手がいない。
2〜4名から
その人の仕事で試せる。社内に「聞ける人」ができる。そこから横に広がる。
「でも、それだと一部の人しか覚えないのでは?」
そう思いますよね。
ここが、いちばん大事なところです。
最初の数名が使えるようになると、社内に「聞ける人」ができます。
研修のゴールは、その人が隣の席の人に教えられることです。
実はこの考え方、国の助成金の向きとも重なっています。
助成金の改正で、見られるようになったこと
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、2026年8月3日から扱いが変わりました。
厚生労働省の資料では、次のような研修が助成の対象外の例として挙げられています。
⚠ 対象外になりうる研修の例(厚生労働省の資料より)
特定の業務への具体的な当てはめがない、汎用的なプロンプトの作り方の講義
DXの概念やデジタル技術の概要を学ぶだけの研修
研修の内容と関係のない部署の人を受講者にしている場合
つまり、「その業務の担当者が、その業務に直結する内容を受けているか」が見られます。
受ける人数で決まるわけではありません。
担当者を選んで、その人の仕事を教材にする研修は、この考え方に沿った組み方です。

※助成金の対象になるかどうかは、個別の条件で決まります。支給を保証するものではありません。申請の手続きは、顧問の社会保険労務士さん、または労働局にご相談ください。
改正の中身は、こちらの記事にくわしくまとめています。
僕の会社のAI研修は、こう組んでいます
僕の会社では、自分の仕事をAIで回しながら、企業向けの研修をお引き受けしています。
制度は、対象にならない内容や休憩を除いた訓練時間が10時間以上あることを要件にしているため、余裕をもって12時間にしています。
時間を満たしても、対象になるかどうかは個別の審査で決まります。
1回で詰め込まず、あいだに実際の業務で使ってもらう期間を挟みます。
僕の会社でも、最初から全部うまくいったわけではないんです。
記事、資料、ページづくりと、仕事を1つずつAIに渡していった結果、いまの回し方になりました。
研修も同じで、1人の1つの仕事から始めるのが、いちばん早いと思っています。
まず、誰の・どの仕事から始めるかを決める
冒頭の「3か月後の社内」は、全員に一度教えることでは生まれにくい状態です。
最初の1人の、1つの仕事。
社内の景色は、そこから変わり始めます。
研修の進め方と料金は、こちらにまとめています。
どの仕事から始めるか迷ったら、年額から決めると早いです。


