元本が守られていれば、本当に安心なのでしょうか?
「元本割れしません」
こうした言葉を聞くと、なんだかホッとしますよね。
特に将来のお金に不安があるときほど、元本が保証されているという言葉は心強く感じるものです。
お金の数字が減らない安心感は、確かに大切だと思っています。
けれども、ここで一度だけ立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
金融の世界でいう「元本保障」とは、あくまで「数字としてのお金が減らない」という約束に過ぎません。
ところが、お金の価値は数字だけでは決まらないのです。
例えば、10年前に100万円で買えたものが、今は120万円を出さないと買えない場面が増えていませんか。
物価が上がれば、同じ100万円で買えるものの量は着実に減っていきます。
銀行の預金口座にある「100万円」という表示が変わっていなくても、買えるものが減っているなら、それは実質的に価値が減っているのと同じ状態です。
数字の上では1円も減っていなくても、買い物の現場では実質的な価値が下がってしまうことがあるんです。
増えない場所にお金を置き続けること自体が、将来の選択肢を狭めてしまう場合もあります。
元本の変動が小さいの陰に隠れた「3つの目に見えないリスク」
僕がよくお伝えしている視点があります。
「元本が守られても、人生の安心が守られるとは限らない」ということです。
少し強い言い方に聞こえるかもしれませんが、ここにはとても大切な意味が込められています。
元本の変動が小さいという言葉の裏には、目に見えにくいリスクが3つ隠れているのです。
1つ目は、インフレ(物価上昇)による実質的な価値の目減りです。
仮に物価が毎年2%ずつ上がっていくと、今あるお金の買える力は、約36年で半分の水準まで落ちてしまいます。
金利がほぼゼロに近い場所に大事なお金を預けっぱなしにすることは、静かに価値を減らしていくリスクを背負うことでもあります。
2つ目は、増えないことで失われる「将来の機会」です。
もし月々少しずつでも新NISAなどを活用して投資信託に回していれば、時間を味方につけて資産を育てられた可能性があります。
リスクを怖がるあまり、お金を増やす機会を捨ててしまうのは、目に見えない大きな損失だと言えるでしょう。
3つ目は、仕組みや固定費の中に潜む目に見えないコストです。
世の中には「元本が守られる仕組み」を備えた金融商品がいくつか存在します。
ですが、そうした仕組みを維持するために、毎月出ていく固定費や手数料が高く設定されているケースは珍しくありません。
途中で解約すると大きなペナルティが発生し、結果的に元本を下回ってしまう構造になっているものもあります。
目に見える値動きのリスクを避けた結果、目に見えないコストや価値低下のリスクを抱え込んでしまうことがあるんです。
お金を減らさない場所と増やす場所の正しい分け方
では、元本の変動が小さいの仕組みはすべて無駄なのでしょうか。
決してそんなことはありません。
お金には、それぞれの役割が存在します。
全財産を値動きのある投資に回してしまうのは危険ですし、逆にすべてを預金にしておくのも効率的ではありません。
大切なのは、自分の資産を3つのグループに整理して配置することです。
- 使うお金:毎月の生活費や近いうちに使う予定のあるお金
- 守るお金:急なトラブルや収入減少に備える「生活防衛資金」
- 増やすお金:5年〜10年以上の長い期間を使って育てていくお金
「守るお金」の役割は、必要なときにすぐに引き出せて、1円も減らないことです。
ここには銀行の普通預金や定期預金といった、元本が確実な場所が最も適しています。
目安としては、毎月の生活費の3ヶ月から6ヶ月分程度を確保しておくと良いでしょう。
例えば月々の生活費が25万円であれば、75万円から150万円ほどです。
この「守るお金」が手元にあるからこそ、心にゆとりが生まれ、日々の生活を落ち着いて送ることができます。
まずはこの土台をしっかり固めることが大切なんです。
一方、当面使う予定のない余剰資金については、「増やすお金」として運用に回していきます。
ここで元本の変動が小さいにこだわりすぎる必要はありません。
長期的にお金を育てる場所として活用したいのが、国の優遇制度である「新NISA」や「iDeCo」です。
今日からできる!
資産と固定費を見直す3つの具体的な手順
頭で理解できても、具体的な行動手順が分からないと不安になりますよね。
誰でもその場で実践できる再現性のある手順をまとめました。
紙とペンを用意して、次の3つのステップを進めてみてください。
ステップ1:毎月出ていく「固定費」を書き出す
まずは、家計の出入りを正しく見直すことから始まります。
通帳やクレジットカードの明細を開き、毎月自動的に引き落とされている固定費を書き出してみましょう。
スマホの通信費、使っていないサブスクリプション、過去に契約したまま放置している毎月の積立サービスなどはありませんか。
昔は必要だと思っていた毎月の備えが、今の自分には過剰な内容になっている場合もあります。
使っていない支出を削り、毎月の固定費を数千円でも浮かせることができれば、それがそのまま資産形成の原資になります。
ここを整理するだけで、毎月のゆとりが変わってくるんです。
ステップ2:「守るお金」の目標額を口座に確保する
次に、先ほど計算した「生活費の3〜6ヶ月分」のお金が、銀行口座にあるか確認します。
もしすでに確保できているなら、あなたはもう十分に安全な状態にあります。
追加で「減らないお金」を無理に増やし続ける必要はありません。
生活防衛資金は、日々の生活口座とは別の口座に分けておくと、誤って使ってしまうのを防げます。
ステップ3:あまったお金で月1万円からの積立設定をする
守るお金の確保ができたら、浮いた固定費や余剰資金を使って「増やすお金」の仕組みを作ります。
おすすめは、新NISAの「つみたて投資枠」を活用した少額からの積立です。
最初は月々1万円や2万円といった無理のない金額で構いません。
投資先としては、全世界の株式に分散投資を行う「インデックスファンド」を選ぶのがシンプルで扱いやすい手法です。
一度口座を開設し、毎月の自動積み立てを設定してしまえば、あとは日常の業務に集中できます。
毎日の株価の上下に一喜一憂する必要はありません。
毎月一定額を自動で買い続けることで、価格が高いときには少なく、安いときには多く買い付ける「時間の分散」が自然と効いてきます。
自分に合ったバランスを見つけるために
お金に関する悩みや不安を、一瞬で消し去る魔法のような商品はありません。
しかし、構造を正しく理解し、順番通りに行動を積み重ねていけば「何とかなる、何とかする」という前向きな実感が湧いてきます。
僕がお伝えしたいのは、根拠のない気休めではありません。
自分自身の家計と向き合い、固定費を削り、少額でも積み立てを継続してきたという「実行した量」こそが、本当の安心を作ってくれます。
誰かの「絶対に儲かる」「これさえ買えば安心」という極端な言葉に振り回される必要はありません。
「守るお金」で足元を固めつつ、「増やすお金」で将来のインフレに備える。
この自分に合ったバランスを見つけることこそが、本当の意味で人生を守る資産形成だと考えています。
お金のプロとして多くの相談を受けてきましたが、最初から完璧な知識を持っていた人なんて一人もいませんでした。
僕自身も試行錯誤を重ね、行動を繰り返す中でこのやり方にたどり着いたのです。
正しい手順さえ知れば、誰にでも同じように整えていくことができます。
一気にすべてを変える必要はありません。
まずは今日、毎月出ていく固定費の明細を1行チェックすることから始めてみませんか。
自分のペースで着実に歩みを進めるあなたを、僕は応援しています。
ここまで読んでくださった方へ
お金の1問1答
読み終わったあとに、「うちの場合はどうなんだろう」が残ることがあると思います。
その1つを、そのまま送ってください。
僕が読んで、返事を書きます。
通話も日程調整もありません。
名乗らなくてかまいません。
数日のうちに、僕が自分で返事を書きます。